人を感動させることができる人は本当にすごいと思う。
ましてや、若い人が「言葉」の力で、そしてその体全体から醸し出される心地よく力強いパッションも持ってその存在のオーラを惜しみもなく私たちに降り注いで来る時、それは震える感動をもたらす。
バイデン大統領就任式で若干22歳のアマンダ・ゴーマンが詩を朗誦し始めたとき、だらだらと他のことをしながら就任式を横目で見ていた私はテレビに釘付けになった。鮮やかな黄色のコートに身を包み真紅のヘッドバンドをしたその若い女の子の身振りとパッション、そしてその発せられた言葉に込められたメッセージは圧巻だった。
アマンダは、ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユフザイの2013年の国連での“One child, one teacher, one book and one pen can change the world.”「ひとりの子供、ひとりの教師、一冊の本、一本のペンが世の中を変えられる。」のスピーチに感銘を受け国連の青年代表になろうと思ったそうだ。翌年16歳でロスアンジェルス青年桂冠詩人を受賞していて、2015年には最初の詩集を出版している。2017年には、全米議会図書館によって新しく創設された全米青年桂冠詩人の名誉ある第1回の受賞者になっている。
受賞後ニューヨークタイムズ紙に語ったところによれば、
“This is a long, long, faraway goal, but 2036 I am running for office to be president of the United States. So you can put that in your iCloud calendar.”
「とっても長くて遠いゴールだけど、2036年にアメリカ大統領選に出馬します。だからあなたのiCloudのカレンダーにそのこと入れておいてね」
就任式の詩にも盛り込まれていたが、彼女の言葉を借りれば「アメリカに連れてこられた奴隷の末裔でシングルマザーに育てられた」双子の片割れである。しかし、教育者の母親に文字が与える力を小さい時から叩き込まれていたという。またバイデン大統領は小さい時にどもりで大変苦労したという逸話があるが、彼女もまた発話障害に苦しんでいて、ほんの2〜3年前まで「r」の発音ができなかったという。
CNNのAnderson Cooper のインタービューで、アマンダは就任式で自分の詩を朗誦するということがわかった12月下旬から、過去の就任式の詩全てを何度も読み、リンカーン大統領が分断された国家に向けてどう演説したかなども参考にし、いろんな文学作品に埋もれて過ごしたそうだ。自分の周りにいる全ての人のおかげで今の自分というものができているとも熱く語っていた。
彼女の詩「The Hill We Climb 我らが登る丘」はオバマ大統領やヒラリー元国務長官などからも絶賛され直後にセンセーションになり、彼女のツイッターのフォロワーが一気に220万人になり、アマゾンの書籍売上の1位と2位にまでなった。
彼女の詩からの抜粋:
… victory won’t lie in the blade, but in all the bridges we’ve made.
・・・勝利は刃にあるのではなく、すべて我々が架けてきた橋にある
朝が来たら、わたしたちは火影から踏み出し平然としていよう。
新しい夜明けは、わたしたちが解き放てば、膨らんでいく。
というのも光はつねにそこにあるからだ。
わたしたちにそれを見る勇気さえあれば。
光そのものになる勇気さえあれば。
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勇気。そう、光を見るには勇気がいる。そして私たち自身が光にならなければならないのだ。
その昔私も拙い詩を書いたりしたものだが、今ではそれが前世のことのように今の現実から離れていることのように思える。Amanda Gormanの力強い未来への希望を感じさせる詩を聞いて言葉の持つマジカルな力を再認識。また詩を書いてみたくなってきた・・・